天然記念物

Ⅰ市立N小学校の理科室には無数の標本があった。特に液浸標本の充実ぶりは類を見ない。室内に収まりきれない大小の瓶詰めが、廊下の両側まで侵食していた。 中でも際立って目を引くのは、オオウナギのホルマリン漬けだ。今はビルの下に埋もれてしまった、J池…

シヴァ神の昼下がり

この小品は、作者が学生時代に創作したものです。 デザイナーのイワカミヨーコが後年、私的に挿し絵をつけたものが、 自家製本の形で残っていました。 生硬ではありますが、作者にとっては、とても愛着の深い一篇です。 カーラの木は氷の噴水だ。地面から天を目…

ねこ ふん ふんじゃった

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ケンちゃんのペット

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てるてるサンタ

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うさぎさんのクリスマスツリー

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ユキダルマくんはロックスター

1-6 2-6 3-6 4-6 5-6 6-6 作/中村徹 絵/中村陽子 メイト発行「なかよしメイト」1995年2月号に掲載 最初の案ではタコくんのロッカーだったのですが、掲載誌の季節に合わせてユキダルマくんに変わってしまいました。

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蒸けの湯のおばちゃん(2006年10月25日の日記より)

女湯のほうで、けたたましい笑い声が上がった。 酔っ払ってでもいるのだろうか、 歳はわからないが、若くはなさそうな女が、 先刻から、ずっと、大声で喚いていた。 笑い声に混じって、聞き取れることば… 「彼氏の名前は?」 「いい男なんでしょう?」 誰か…

フォルコルン(2006年11月05日の日記より)

フォルコルン。 ぬいぐるみの猫の名前である。 ライ麦全粒粉のドイツパンにちなんでいる。 黒パンのように真っ黒で、もこもこしているから、 フォルコルン。 パンのフォルコルンは、新宿の伊勢丹で見つけた。 ずっしり重くてハードだが、中はしっとりの、 本…

かるちゃーしょっく(2008年11月08日の日記より)

阪大を8年掛けて卒業した、明石家さんまそっくりの同僚S君を相手に、一応のシミュレーションは重ねた。 それなりの成果があるものと期待していたのだが… そういえば、さんまさんは生粋の大阪人ではない。 確か和歌山生まれの奈良育ちだ。 S君も実をいうと、…

アイサンサン

美空ひばりが「愛燦燦」を歌っている。 液晶に映し出される光の像とデジタル化された歌。 すべてが虚像。 が、美空ひばりという実体そのものも、もはや存在していない。 時計代わりにテレビを見ながら、さっと昼食を済ませ、午後1時に家を出る。 3時に都内…

『山本さん家の場合に於るアソコの不幸に就て』という漫画本がある。ひさうちみちお作の恐るべき短編集である。 中でも印象的だったのは『不幸』という作品。具体的な展開は忘れたが、主人公は「不幸」である。名前でも、あだ名でも、暗喩でもない。文字どお…

とぺぼ(2007年08月16日の日記)

「ほら、とぺぼが来たよ」 母が言う。 母の実家、秋田の田舎には「とぺぼ」が出没した。 一応人間の形をしていたが、実際は何だったのかわからない。 幼い僕にとっては、「とぺぼ」は「とぺぼ」、 それ以外の何者でもなかった。 「とぺぼが来た!」 誰かが口…

月になる

田谷山定泉寺という真言宗の寺で、 修行していたことがある。 道場は洞窟の中である。 洞窟の奥深い道場で私は、 真言密教の瞑想法の基本中の基本、 月輪観を修したものだった。 月輪は「がちりん」と読む。 細かい所作や呼吸法は割愛させていただくが、 要…

俺との再会(2008年10月24日の日記)

月刊「美術の窓」の最新号だった。 表紙が俺に手招きしていたのだ。 レジかごの中に俺がいる。 「コンビニエンスストアの母子像」。 約束の時間まで10分ほど余裕があったので、 書店で時間をつぶすことにした。 アート系の雑誌の棚の前を歩いていたときだ…

折口信夫「死者の書」レビュー

した した した。耳に傳ふやうに來るのは、水の垂れる音か。 絢爛豪華なモノクローム 言霊に呪縛される やまとことばに酔う した した した。 冒頭いきなり、このオノマトペに呪縛された。 脳の襞の奥深く、記憶の闇の中で、太古の水が滴る。 死者の耳に聞こ…

雨だから

雨だから出かけた。 蕪を買うためだ。 なぜ蕪を買うかというと、雨だからだ。 雨だから食べたくなったのだ。 電機メーカーの寮の敷地をフェンス越しに見やると、 雑草に混じって、ネジバナが咲き乱れていた。 好きな花なので、しばし眺める。 八百屋ではスズ…

アラバスター

手塚治虫に『アラバスター』という作品がある。 主人公は、特殊な光線を浴びて、半透明の体になってしまう。 「グロテスクで淫靡な作品を書きたかったが、 世相などの影響からか、徹底的に救われないニヒルな作品となった」 として、手塚自身は自作の中でも…

微塵

ジンくんに会ってくれと言う。 ジンくんとはペットらしいのだが、 ペットと言うとミシオさんは必ず、 「ペットじゃないっ!」と反論する。 さもなければ黙りこくる。 最初は犬か猫だと思ったのが、どうやら違うらしい。 「飼うとかそういうレベルじゃないん…

おんなきっちゃ

なよなよと内股で歩く。 声も高く、一人称は「ぼく」だが、 時に男子っぽくない語尾がまじる。 小学校の同級生のS君だ。 四つ違いのお姉さんは、色白でほっそりした、 かなりの美人だった。 S君も、そのお姉さんに、似ていなくもないわけだから、 イケメン…

丙午

桜庭一樹の『赤朽葉家の伝説』を読んでいたら、 ヒロインの一人が丙午だった。 丙午の猫は多分、今は存在しないだろうが、 あと13年生き長らえば、出逢える可能性がある …などと、目の前の猫を睨みつつ、 どうでもいいことに思いを馳せてみる。 そういえば丙…

臓物通りへようこそ

グリム通りとか、アンデルセン通りとか、アリス通りとか、 メルヘンチックな名の通りが多い街だった。 名前はメルヘンだが、しかし、どの通りも、ごく普通の、 今どきの商店街だ。 総菜屋、薬屋、ファストフード、カフェ、スーパーなどの、 チェーン店に侵略…

強い猫ほどよく吠えるか(2010年06月11日の日記)

「わさお」という、ブサカワ犬が大人気だが、 ここに登場するこいつは、さしづめその猫版。 不細工さでは、わさおの上を行っているのではあるまいか。 何よりこの汚さを見てほしい。 わがマンションに最近来るようになった新参者だ。 新参者というより、流れ…

ノロはノロノロやってくるか(2006年12月24日の日記)

ノロウイルスにやられたらしい。 らしい、というのは確認したわけではないからだ。 不思議な前兆があった。 その日、朝刊を読もうとしたら読めない。 文字が二重に見えるのだ。 下のほうに、ややずれて、やや薄くゴーストが出る。 こうなると、特に縦書きの…

ねじねじ(2006年12月20日の日記)

ねじねじが苦手だ。 パンツなどのゴム紐の捩れである。 ちょっと捩れているだけで、 いらいらして気が狂いそうになる。 風呂から上がって、パジャマに着替える。 ねじねじだ。 穿いたままウエストを両手でしごいて、 なんとか直そうとする。 うまく行かない…

うさぎ恋いしかの…(2010年05月17日の日記)

黄色く晴れた午後だった。 公園を斜めに突っ切って、待ち合わせ場所に向かう。 土曜日ということもあってか、昼日中から人の密度が高い。 小高い丘にある花壇の、低い石垣の囲いに腰掛けている、 ショートボブの女性が、目に飛び込んできた。 正面に何かを抱…

6階の少女(2008年8月24日の日記)

同棲中の二人の女がいる。 二人とも空から降ってきた。 一応そういうことにしている。 種を明かせば、2匹の野良猫少女なのだが、 マンションの6階に、突如として出現したのは、やはり、 尋常ではないかもしれない。 ある朝早く、猫の鳴く声がする。 かなり…

猫長明の方丈記(2010年06月4日の日記)

相も変わらず幼稚園児か小学生だ。 行事の前日には決まって、熱を出したり腹が痛くなったりする。 5月29日、京都鹿ケ谷法然院で夕刻から、川本真琴さんのライブがある。 数日前から熱っぽかったのだが、その日の朝は妙に顔がほてった。 早朝に測ってみると、…

雨に金木犀、馥郁と福井〜2009/10/23記

予報どおり雨が降り始めた。 関東では終わりに近い金木犀の香りが、雨の匂いに混ざる。 ただ川本真琴さんに会うだけの目的で、 福井市内まで来てしまった。 10月17日、土曜日の昼下がりである。 午後6時半から始まる福井CHOPでのライブには、 まだ…