2012-10-01から1ヶ月間の記事一覧

こんちゃん

「こんちわ」 ホームレスの権三郎さんが言った。 権三郎は本名ではない、 たぶん。 たった今、初めて遇って、とっさに浮かんだ名前だ。 小柄で丸顔で顎鬚のおじいさん。 5メートルにもなんなんとする空き缶の小山を、 後部に積み上げた自転車を手で押して、 …

ぼく、そうめん

猫をワクチン接種に連れて行こうとして悪戦苦闘していた。 そんな朝8時だった。 例によって、なかなか捕まらない。 猫は、とうに察している。 何とか浴室に追い込んでキャリーにぶち込んだ。 少しおしっこを放たれたが、衣類にはかからなかった。 今回の猫…

ぼっくり氏

ぼっくり氏が、うちに来たのは、ザリガニのせいだった。 近所の公園の遊歩道には、ときどきザリガニが出る。 公園を突っ切って用水路があり、 ザリガニは、そこに生息しているのだが、 木立の中の遊歩道は用水路から、相当に離れている。 ザリガニが自力で散…

ドグラ・マグラ

呼吸器系の病で、通院していたことがある。 呼吸器内科の外来は、精神科の外来と隣り合っていた。 診察を待つ間のつれづれに、お隣さんを見るともなしに見る。 みんなごく普通の人たちだ。 患者同士で穏やかに歓談したりしている。 誰一人として、心を病んで…

AUTOMATIC WRITING

automatic writingで、 こんな文章が飛び出してきた。 どうやらラテン語らしいのだが… Tondemona sum in Notre Dame. Serius unus versus est penuria in a valde divinatio of Nostradamus. Subtilitas of divinatio proventus drastically per condita sur…

たぶん夢なんだ牢

これは夢に違いない、 区別のつかないことも間々あるが、今回は確信がある、 と思った。 I市立西小学校の教室だろうか。 それとも同北中学校か。 大好きなマナミさんを前にして、ぼくは、 緊張のあまり棒杭のように硬直している。 マナミさんは笑う。 にこ…

JUGON BOY

上位10名による最終審査が、いよいよ午後に迫っていた。 アキヒコは鏡を見ながら、眉を動かしたり、口を歪めたりする。 予選を勝ち抜いていくうちに、だんだん自信が増してきていた。 そもそもの始まりは、女子高生のアヤちゃんだった。 アキヒコ本人に断り…