2011-01-01から1年間の記事一覧

生意気な舌

猫は味がわかるという。 我が家の猫たちを見ていると、確かにそんな気がしてくる。 うちはキャットフードなのだが、それぞれに好みの銘柄がある。 かといって、そればかりというわけにもいかない。 同じ餌が続くと、生意気にも、そっぽを向くのだ。 おまけに…

ギョーカイミーハー

ラジオでN社のCMが流れている。 大学を出て初めて就職した会社だ。 当時は広報宣伝部門で主に、 コピーライターの仕事をしていた。 ラジオCMも何本か手がけた。 録音に立ち会ったことも一度だけある。 ナレーションは小林克也氏。 背は思ったより低かったが…

猫の島

石巻から船で1時間もかからない、小さな島である。 田代島という。 猫好きの間では、かなり有名だが、 当時はまだ、さほど知られてはいなかった。 テレビで「猫の島」として紹介されたのが、きっかけである。 何をさておいても、行ってみたいと思った。 大…

南部沿線皿屋敷

南部沿線道を小杉方面に向かって歩いて行くと、 左側に唐突に古井戸が出現する。 いわくつきの井戸である。 幽霊が出るというのだ。現在の井戸が往時の姿を、 どの程度とどめているかは明らかではないが、 少なくとも江戸末期安政年間には、すでにそこにあっ…

温泉教室

学校はもっぱら国公立だったが、唯一幼稚園だけは私立だった。 といっても、公立の幼稚園から移って、1年足らずの短期間だ。 野間自由幼稚園という。 伊豆の伊東市に在った。 伊東のような田舎では珍しく、おしゃれな幼稚園だった。 それもそのはず、昭和23…

かまいたち

悪ガキのY君が、秘密の遊び場に連れていってれるという。 ぼくを入れて4、5人の子供たちがついていった。 着いたのは、ブナ類の生い茂った急斜面だった。 立ち入り禁止の場所だったような気もする。 斜面の上から、コンクリートで固めた細い溝が走っていた…

DNA(どこ・のこ・あのこ)

ぴかっ たったったったったったったっ… 閃光の中を、こびとが駆け抜けていく。 ゴロゴロゴロゴロゴロ… ぴかっ たったったったったったったっ… 今度は反対の方角から 四畳半の畳を全力疾走。 ゴロゴロゴロゴロゴロ… ぴかっ たったったったったったったっ… 上…

怪老不落畜

東急目黒線沿線に、評判のカイロプラクティック治療院があった。 院長の技術的手腕に負うところが大きいが、そればかりではない。 有能な弟子たちが輩出していた。 人徳なのか、育てるのがうまいのか、 とにかく、よい人材が出る。 すると、ますます、よい人…

おおまがとき

たそがれは、おおまがときであるという。 漢字では黄昏と表記されることが多いが、誰そ彼の謂いとか。 おおまがときは大禍時であり、大魔が時であり、 また逢魔が時でもある。 つまりは、ともすると魔に遭遇する時間。 そんな時間に、分譲地内の坂道を登って…

妖怪カイナデ

幼いころ田舎の古い便所で遭遇した妖怪の話は以前、書いた。 尻を撫でる妖怪である。 その時点では、名も無き謎の妖怪だったのだが、最近、ある本の中に、 同一か、少なくとも同系同類と思えるやつを発見した。 カイナデという。 『京のオバケ―四季の暮しと…

痴怪

ただでさえ怖い便所だった。 田舎の古家にありがちな作りで、 母屋とは少し離れたところにあった。 背後に庭木があるので、昼間でも薄暗かった。 トイレとは、とても呼べない。 どうしたって便所、あるいは厠、 と呼ぶのが似つかわしい。 ストール型の小便器…

おともだち

誰にでも見えるものだと思っていた。 妖怪、物の怪、妖精、お化け、幽霊、魑魅魍魎… どう呼ぼうとかまわない。 幼い私は「おともだち」と呼んでいた。 見えるのが当然と思っていたから、 人間の友達に対しても当然のように、「おともだち」の話をする。 する…

春のようになまめく真冬の夜に

ガタンゴトン夜汽車の音で目が覚めた。 新幹線が近くを通るが、これは違う。 お伽の汽車の夢だったのだろう。 と思ったら、またガタンゴトン… 猫が餌を転がしていた。 陶器の餌入れを、ちょうどぴったりのタッパー蓋で塞いだやつだ。 蓋を開けようと、フロー…

氷の火傷

こんなに白い女性は何年ぶりだろうか。 レジの女性の肌が、不自然なほど白かった。 光の加減で、内蔵が透けて見えるのではないかというほどに。 新型インフルエンザが蔓延して以来、店舗に広がった暗黙のルールで、 彼女もマスクをしている。 マスクよりも肌…