華に額づく

スェーデン在住の知人から、ずっしり重い荷物が届いた。
『体系への情熱 ー リンネと自然の体系への夢』なる豪華本であった。
リンネ生誕300年公式記念出版本で、
贈り主は日本語版の翻訳を担当した人である。
http://www.linnaeus.se/se/jap.4.3b063add1101207dd46800031253.html


内容はかなり専門的ではあるが、
女流写真家ヘレン・シュミッツによる、花の写真がすばらしい。
繊細かつ大胆に花の秘部に迫っている。
http://art.signature.co.jp/heleneschmitz/index.html


その視線はあくまでも冷静でありながら、
官能的でエロティックですらある。


黒地をバックとした花たちのクローズアップは、
花というよりも華であり、
思わず額づき、押し戴きたくなってしまうほどだ。


それもそのはず。
ある意味では当然ともいえる。
本書はリンネが植物を24綱に分類した「性分類体系」の、
画期的な成果を基にしているからだ。


性を比喩的に語ろうとするとき、しばしば、
「メシベとオシベが…」というようなことを言う。
これはまさに、その先蹤となる試みなのだ。
(人に擬して植物を語っているので、厳密に言えば、
アナロジーの方向が逆になってはいるが)


たとえば表紙の花はアメリカデイコで、
第17綱二束雄蕊綱に分類され、


 男性たちは、2つの母体から伸びている。
 雄しべの花糸が合着し、束が2つできている。


と注記される。


 妻と夫と未婚の同棲者が、雑居している。


なんてのもある(雌雄雑居綱)。


(2008年01月14日の日記より転載)


追記:ぜひとも一家に一冊とお勧めしたいところなのだが、
   残念なことに、もう入手は困難な模様。
   日記を書いた時点では、公式サイトにメール等で直接注文すれば、
   購入もできたのだが…