夜だか系

ぼくは草食系男子ではありません。
草食男子です。
ほとんど草ばかり食って生きていますから。


空気や霞も食っているので、草食空食男子、
と言ってもよいかもしれません。


草食系とは比ゆ的な言い回しであることは、
もちろん承知しています。
ちょっと、おちょくってみただけです。


なぜ、おちょくったかというと、
この言い方が嫌いだからです。
ハンパない、という言い方と同じくらい嫌いです。
半端でなく嫌いです。


最近は草食系男子が増えているが、
実は女性の大半は肉食系を求めている、
というような、決め付けた物言いにいたっては、
不快極まりません。


とにかく、ぼくは草食系男子ではありません。
では、肉食系かというと、
そうかもしれないし、そうでないかもしれません。


草食とか肉食とかという話になると、
思い出してしまうのは宮澤賢治です。
『ビジテリアン大祭』という直球の名作もありますが、
ぼくが一番好きなのは『夜だかの星』。


作中、わけても胸に迫るのは、意に反して、否応なく、
虫を食べなければならない夜だかの、悲痛な嘆きです…


「ああ、かぶとむしや、たくさんの羽虫が、毎晩僕に殺される」


それは、まさに、業の叫び、原罪の痛みではないでしょうか。


泣きながら天に上った夜だかは、星になりました。
星になることによって、果たして救われたのかどうか…


いずれにしても、夜だかのそんな原罪の痛みが、
ものすごく共感できるのです。


だから、みなさん、ぼくのことを、
「夜だか系男子」と呼んでください。